都心の道路とタクシー

ある日、乗っていたタクシーがふいに急停車した。どうしたのかと思うと、交通のはげしいなかを、中年の女の人がゆうゆうと横断しているのであった。運転手さんがブツブツこぼすのを聞き流しながら、考えてみた。

たしかに、信号や禁止を気にしないで道を横断するのは、老若を問わず女のほうに多いようである。もちろん、男にもそんな人はあるが、男は気にしながらそれをやっている。
きっと、女の人たちは「車を運転しているのは大部分が男だから、あたしに気がつかないはずがない」と信じているからなのだろう。
もし将来、女性があらゆる分野を支配するような時代になり、運転する人も女性ばかりになったら、スタイルのいい青年たちは、目をつぶったままで道を横断できるようになるのではないだろうか。
こう空想しているうちに、タクシーは目的地に着いた。